セクシュアリティーは「心」のこと。心がどこへ向くかということ。
間違った認識をしていると、相手の尊厳を傷つけることがあります。今日は相手の性を尊重することに関するテーマの記事です。
気になるけど見ないようにする行為
やりたいことがあって前へ進もうとしている時に何か「気になること」があると、それが足かせになります。
100%目標に向かって注力を注ぐことができないからです。ただ「気になってること」の中には、気づいていることと気づいてないことがありますよね。
ほとんどの人が気づいていない “気になってること” の一つに「性」の問題があげられます。 ここが解決して気にならなくなると、一気に目標に向かって行動できるようになったりします。
そのぐらい人間にとって、というか生き物にとって、基本的なエネルギーの源なのでしょう。 性に関する問題は、本当は「気になってること」なのに、気にしないようにしたり、無いものとする傾向が見受けられます。
トラウマだとか問題には必ず「光」を当てなくては、解決していきません。
光をあてるというのは「あ、ここにあるんだね」と認識することです。
男女の関係にまつわる性の問題だってややこしいのに、その他にも色々なパターンもあるし。ヘテロセクシャルもあればホモセクシャルもある。
若い頃、たまたま(知らずに)バイセクシャルの男性に恋心を抱いたことがありました。
趣味嗜好が似ていて話がすごく合うので仲良しでしたが、「男なら年下、女ならオバさんが好き」と明言していたその男性。若かった私は友人止まりで恋人候補にはなれませんでした。
それぞれの性に対して尊重することがとても大切です。
相手のための尊重という意味もありますが、それは自分のためでもあるのです。
そんなことは誰もがわかっていること。
だけど、私たちが考えるよりもっとデリケートな要素を含んでいるのも事実です。
例えば「子供はどうするの?まだなの?」と聞くのもセクハラになりえます。
ある同性愛者の男性と、性的な行為をしたくない女性が結婚して幸せに暮らしていましたが、時々このセクハラ質問をされていて気の毒でした。
もう一つの性 A-セクシュアル(アセクシャル)
最近ではテレビドラマなどでも同性愛者の役回りが出てくることも結構あって、さまざまなセクシュアリティーの多様性が認知されるようになりました。
他にも、みんなが知っていなくてはならない性があります。
それは「アセクシャル」と呼ばれる性の種類です。英語ではA-sexualなので「あ」というよりローマ字の「Aえい」と発音します。なので、A-セクシュアルと書くのが一番しっくりきます。(追記→ 後年アセクシャルと訳されるようになりました)
日本語に意訳すると「無性愛者」になります。恋愛や性的な接触に対して、いっさい興味がないし欲もない方々です。
私が初めてこの言葉を聞いたのは、20年前ぐらい前のこと。アメリカ人の女友達と話をしていて教えてもらいました。
アメリカではかなり昔から認知されていたことですが、日本ではどうでしょうか。
カナダに所在するBrock Universityのアンソニー・ボガート准教授の著書「Understanding Asexuality」によると、全人類のうち1%の人(男女)が「A-セクシャル」だそうです。
18000万人の男女に対し「性的魅力」についてアンケート調査したところ、「異性でも同性でも性的な魅力をまったく感じない」と回答した人が1%
少ないように思えますが、世界人口の1%だとおよそ七千万人(700,000,00人)も存在することになります。
私の個人的な感覚としては、もう少し増えているように感じています。
クライアントさまとお話しする中で、恋愛や結婚の話題も多いのですが、継続的にお話をうかがう中で「どう考えてもお相手はアセクシュアルだな」と思えるケースが時々あります。
素敵な男性で、優しいし自分のことを好いてくれている。時々デートをしている。だけど...性的な接触はいっさい無し。手も繋がないし肩に触れたりするのも嫌がる様子を見せる。だから「私のこと好きじゃないんだ」と思って距離を置こうとすると、また会いたがる。
そのような態度をされて、「も〜!意味不明!」とイラっとする人もいらっしゃるようです。でも、ある程度の時間が過ぎても上記のようなそぶりがあれば、アセクシュアルかもしれないと考えて対応した方が良いケースもあります。
なぜならば、相手の「性」はリスペクトしなくてはならないことだから。 アセクシュアルの人の特徴を端的に言うと、
・友達づきあい好き
・皆んなで楽しくパーティーしたりも好き
でも....
・一緒の家に誰かと住むのは絶対無理!
・体にベッタリ触られるのは絶対イヤ!
・手を繋ぐのもNG!
こんな特徴があります。 生育環境でこうなったのか、生まれつきなのかはわかりません。とにかく身体的な密着を嫌います。
相手を大好きでも、です。
ちなみに、以下のような人は「A-セクシュアル」のカテゴリーには入りません。
Aセクシャルではありません⤵︎
x臆病で異性と付き合えない
x自分に自信がないから人付き合いが苦手
x性行為が恥ずかしいからできない
xいいなと思う人がいるけど積極的になれない
x性的に機能不全
これらのケースは似ているようで、違います。
セクシュアリティーは「心」がどこへ向くか?ということ。
例えば、同性愛者は「心」が同性を求めます。
A-セクシャル(無性愛者)は「心」が恋しない人であり、恋人として誰も求めていないのです。性的欲求もありません。
異性愛者の人でも、恋愛対象ではない人には恋をしませんよね。でも友人や家族や仲間を愛します。
それは、アセクシュアルの人だって同じ。
大好きなお友達や仲間がいるけど、だからといって恋愛感情は誰にも抱かないんです。
そんなわけで、アセクシュアルの人と仲良くしてもらってる人の中には、一方的に恋愛感情を持ってしまう人もいるわけです。
例えば、職場にアセクシュアルの人がいたとしても、気づきにくいです。わかりにくいという事もあるし、なにより広く認知度されてないセクシュアリティーなのので、アセクシュアルの人に対して失礼な言葉を投げかけてしまいがちです。
アセクシュアルという性のカテゴリーを知らないがために、悩みが生まれてしまうケースは思ってる以上にあるんです。
恋愛を無理強いしないで一生の友とする
人にとって大切なのは、どの性 / セクシュアリティーを持っていたとしても相手を尊重しそれを受け入れること。決して無理強いはしないこと。
無理強いするのは、意外なことに女性の方が多いんです。
例えば、相手の男性がホモセクシュアルだと知っているにもかかわらず「彼を愛してる!」「いつか振り向いてもらえるように頑張る!」などと、主張する女性。
聞こえはいいかもしれないけど、これは相手の意思や価値観を尊重せず、相手を無理矢理に変えようとする行為。
「想い」の暴力とも言えます。相手の領域に土足で踏み込もうとしている状態ですね。
アセクシュアルの人は、本人に自覚がないことも多いのですが、ある程度の期間おつきあいがあればなんとなくわかってくるもの。
「アセクシュアルかもしれない」と判断できたら、問いただすのではなく、そっと相手の性を尊重するように切り替えましょう。
女性の中には、そういう男性を「おそっちゃうぞ」と計画する人もいますが、それはやめましょう。
心の友達として末長くお付き合いしていく道を選ぶと、お互い幸せになれます。
アセクシュアルの人とは性的な接触が一切ないのですから、他の人と結婚した後だってずーっと一生おつきあいしていける関係でいられる。
とっても素敵なことではないですか!?
そう思えば、「こんどおそってやる!」なんて恐ろしい考えは引っ込んでしまうのでは?(と...願ってます)
アセクシャルを知ろう:まとめ
アセクシャルの人は恋愛感情を抱かない。さらに、他の人の恋愛話を聞いてもピンときません。
密着ボディータッチはもとより、肩に触れる、ハグ、手をつなぐ、なども嫌います。
友達づきあいは大好きです。
お互いをリスペクトしつつ、仲良くしていけたらと思います。アセクシュアルの人だけでなく、すべてのセクシュアリティーの人達とも。
追記:
文中に出てきたバイセクシャルの男子にフラれたときのことを、レズビアンである友人に話したら色々としかられました。「ノンケの人は無神経すぎる」と。
大昔の出来事ですが、とても反省したのでこの時のことはよく覚えています。それ以来、セクシュアリティーには多様性があるということ、自分はその中の一部分に過ぎないということを肝に命じています。
この間、年配の男性が「すぐセクハラだのモラハラだのめんどくせえ世の中になったなぁ」と言っていました。価値観やセクシュアリティーの多様性について腑に落ちてないから「めんどくせえ」となるのでしょう。受け入れられないから腑に落とせないのです。
同じ年代の人でも、昔も今もそのような発言をしない人だっていっぱい存在します。ある事象を受け入れられない(府に落とせない)のは「自分自身に問題があるかもしれない」ということに気づいて欲しいなと思いました。