ハワイ在住の友人が久しぶりに帰国したので、地元の友人3人でランチ しました。
その時の話題で、地元の昔からの友達Kが「巨匠」になった(!?) との噂を聞いたので、日を改めてその彼のお店に遊びに行ってみよう!という流れに。
なんでもTVの1時間番組で「フレンチの巨匠」として、 その子の特集が放映されたとのことで、驚きました。ハワイ在住の子は知る由もなく、私はTVを見ないので知らなかったのです。
青山のおしゃれなビルディングの中にそのお店はありました。 海外の高級レストランのような重厚な趣があってとても素敵です。
こんなゴージャスなお店のエグゼクティブシェフになったなんて Kはすごいな〜と感心するばかり。尊敬しかない。
私たち2人とも彼と会うのは5年ぶりくらい。懐かしい話しに花を咲かせました。
あいかわらずの喋り方。人って偉くなっても巨匠と呼ばれるようになっても、変わらないとこは変わらない、それがまたいいよね。
前菜からとってもKらしい一品が出て来た。これはポロネギをただぎゅーっと固めたお料理にウズラの卵が乗っている だけのシンプルなもの。
それなのに感激的な深い味わい。
この後はトリュフがたっぷり入った絶品「フランス栗のスープ」が出た。
彼のお料理の特徴は、お野菜や素材の味がメインにそのまま活かされた 味付けになっている、ところ。「お野菜の味がする〜」と毎回食べるたびに言ってしまいます。
Kの作るお料理は、フレンチの中でも南フランスの特徴があります。
南フランスのニースにある『ドン・カミーヨ』というお店で10年 メインシェフを勤め、その後はモナコの名門『ルイ・キャーンズ』に 5年もいたのです。
私もハワイ在住の友人も、15年くらい前にニースの彼のところに遊びに 行った事があります。
もちろんドン・カミーヨでもお料理を堪能させていただき、Kのおかげで感激的な滞在となりました。
お食事の前に、素敵なバーカウンターがある待ち合いルームでKと5年ぶりに話しをした時には、いつもと変わらず昔のまま普通に会話をしました。
ところが、彼の作った料理を一口食べて目頭が熱くなりウルウルしてしまいました。
久々に話しをしても特に何も反応が起こらないのに、「味覚」の記憶に よって懐かしさや感激の気持ちがこみ上げてきたのです。
情動記憶ってやつですね。
彼の作る料理には、見習いコックだった時からまったく変わらず「真心」 が込められいる、そんな感じなのです。
一口お料理を食べて「Kの味がする...」と、友人と二人でウルウルして しまいました。
巨匠になっても同じ味がする。
「Kの味」は、20年以上前から変わっていない。
皆で湖に釣りに行ってシーバスをとってきて友人宅で食べた事があった。料理はKに任せて、皆で遊んでいたらそのうち調理した魚を持ってきた。
「うっそ〜!美味しい!」まだ見習いなのにこんな料理が作れるなんて、と皆で大感激したのを覚えています。
今でも忘れられない味です。
その時の「味」にも、先日食べた巨匠の「味」にも同じものが込められて いたのです。そのことを、味の記憶によって思い出しました。
情動記憶は、無意識から鮮明に蘇ってくるものなのですね。
情動記憶というのは、感情を伴った記憶のこと。
もし情動記憶がネガティブなものなら、ずっと潜在意識に残っていたら たいへんです。
良い情動記憶をたくさん蓄積していけたらいいですね。 (いらない情動記憶を消すことは大変だけど可能です)
(ブノワ)