先日、ある喫茶店のマダムが請求書を見ながらなにやら訝しげにぼやいていた。歯科医院に領収証を請求したら、よくわからない診療点数がついていたというのです。
そこでマスターがじっくりと請求書をチェックしてみたところ、特に間違っている箇所は無く、事前に聞いていた治療の分だけの正しい請求だったとわかりましたので、誤解はとけました。マダムはそもそも歯科医院に対して懐疑心が大きかったために、そのような疑念が生まれたようでした。
どこの歯科医院に通っているのか聞いてみたら、1丁目の山小屋のような一軒家の医院に通っているとのこと。
「3丁目にもガラス張りの素敵なガーデンがついた歯科医院がありますよね〜?あそこはどうなんだろう?」と問いかけると、「3丁目の歯科医院はセレブ御用達だから、私達は行ってないの」ということでした。
セレブって?なんだろう?という顔をしていると、「あそこは保険の詰め物は入れてくれない主義なのよ」と説明してくれました。
そこへ行くと支払額が高いから「セレブ」という意味だったんですね。
自分の体の価値をどう捉えるか
歯科治療には2種類あって、保険内でできるものと保険外(一般)でやってもらえるものとでは、内容が全く違います。
保険内で入れられるパラジウムやアマルガムなどの金属を歯に詰めたら、その時に窓口で支払う費用は確かに安くつきます。
ですが......
将来、支払わなければならない代価は、金額では計りしれないくらい大きなものになる可能性があります。悪い意味でです。
保険で入れられる歯の代表はパラジウム合金でできた銀歯。これは、金属の中でも硬度が高く、硬い金属です。歯を削り、その穴に金属をピッタリ入れることはミクロの世界でみても大変なこと。
それなのに、毎日咬んだり歯ぎしりして歯が削れていったり摩耗してゆきますから、硬い金属だと“歯”と“金属”の境目の縁のところにどんどん段差ができてしまいます。(目には見えにくいけど)
そして、そこに食べかすがひっかかったりして、2次カリエスになってしまいます。
もう少し柔らかい金属を使えば、歯ぎしりしたり咬んだりしているうちに、金属と天然歯がなじんできて、さらにピッタリになります。
金とか白金などは柔らかい金属です。2次カリエスの確率がグンと下がります。でも、それは保険ではできないので自費になります。
そんな将来の明暗を分けるといっても大げさではないくらいの違いがあるのに、ただ単に「高い」「安い」でしか判断しないのでは、健康リスクが高くなってしまいます。
それを一番良く知っているのは歯科医師や歯科衛生士の方々。彼らは家族や友人達に「保険の治療は受けないように」と、強くすすめます。大切な家族には保険でまかなえる範囲内の歯科材料は口の中には入れさせません。
お医者さんも、自分や家族が癌になったら放射線治療や抗がん剤治療は受けない人が多いそうですが、それと同じようなことですね。
自分や家族に勧めていることを、患者さんにも勧めているのに「高い」とか「セレブ御用達」などと、受け止められると先生方も憤りを感じるかもしれません。
価値観は人それぞれだからしかたがないですし、理解するにはある程度の知識も必要です。
けれど、私にとってマダムはとっても大切なヒト!だから、昼下がりの喫茶店で力説してしまいました。
ご縁あってブログを読んでくださったみなさまにもシェアーしようと思い、記事にしてみました。